コラム
- 2021.03.29
- 家族信託は誰に頼めば良いの!?専門家は?自分でもできるのか?
目次
家族信託では、信頼できる家族など身近な人に財産を預けることで、柔軟な財産管理・運用を実現できます。
ケースに応じた様々な利用法が考えられ、相続対策や認知症対策など幅広く利用を検討することができるので、近年急速に名前が知られるようになってきました。
これまで対処が難しかった問題にも対応が可能となるので、ぜひ皆さんにもご検討頂きたいものですが、事案に応じた有効な信託契約の設計が非常に高難度となることから、専門家と綿密に連携を取りつつ進めていくことが望まれます。
本章では家族信託を検討する際の相談相手に誰を選べば良いのか、あるいは専門家に頼らず自分で進めることもできるのか考えていきます。
家族信託を行える専門家は?
現状では、家族信託についてアドバイスを行える者として法律上の制限は特になく、例えば弁護士でなければできない、士業でなければできないといった制限はありません。
家族信託の制度自体を細部までよく理解し、相談者の状況をよく聞き取って適切な信託設計ができるのであれば、相談を受けることやアドバイスなどであればだれでも行うことは可能です。
ただし、弁護士や司法書士などの士業には、法律上士業者以外ができない行為もあるので、この点には留意が必要です。
例えば具体的な交渉業務が発生した場合、弁護士以外の第三者が行うことは制限されますし、信託手続き上で不動産の登記が必要な場合は弁護士や司法書士以外は制限を受けます。
上記のような個別の手続き上の仕事は随時対応できる専門家に依頼するとして(あるいは自分で行う分には問題ありません)、家族信託で最も重要な核の部分は有効な信託設計ができるかどうかです。
ケースに応じた幅広い運用が可能な反面、どういう問題に対してどのような信託設計が有効かなどを考え、相談者の問題や課題を手当てできる能力があるかどうかが非常に重要な要素になります。
この点を考えると、専門家を頼らず自分で進めることも絶対に不可能というわけではありませんが、実際問題として安全で有効な信託設計を素人が行うのは無理が出てきます。
そのため、現実面を考えると専門家を頼らざるを得ないというのが実情になります。
専門家にも色々ありますが、次の項からは各専門家について、家族信託の相談をする相手として有効性や利点などを見ていきます。
司法書士・行政書士に頼んだ場合
家族信託が注目されるようになってきたここ数年で、司法書士や行政書士の中にも家族信託に力を入れて相談に応じるところが多くなってきました。
元々、司法書士や行政書士は相続分野を得意とする者が多い印象があります。
相続対策として遺言書作成の手助けや遺産分割協議書の作成などを扱っているので、家族信託も親和性の強い領域になります。
両者のうち行政書士の強みを見ると、契約書の作成が花形業務の一つであることが挙げられます。
家族信託契約書の作成は必ず必要になるので、行政書士には適性があると言えます。
また公正証書の作成サポートも得意領域ですので、家族信託契約書を公正証書化する場合も問題ありません。
また一般的に士業の中では相談料や手数料が最も安くなることが多いので、費用負担の面でメリットが強くなります。
一方、司法書士も相続分野を得意とする者が多く、行政書士と同様に遺言や遺産分割協議書の作成に携わる者が多いです。
司法書士の場合、不動産の登記に強い利点があります。
不動産登記といえば司法書士というくらいの花形業務ですから、家族信託で不動産を扱う場合、信託登記の手続きでは司法書士に強みがあります。
行政書士は登記を代行することはできないので、提携する司法書士に依頼するなどして対応することになるでしょう。
費用面では行政書士よりも司法書士の方が割高になる傾向にありますが、現在の士業報酬は自由化されたため、個別の事務所によって異なります。
そのため目安となる費用額を例示することは非常に困難ですが、信託内容がそれほど複雑でないものとして、ヒアリングと家族信託契約書の作成費用として行政書士が10万円~20万円程度、司法書士が20万円~30万円程度を目安として考えることができます。
弁護士に頼んだ場合
弁護士も得意分野や守備範囲が様々です。
あくまで家族信託に詳しいという前提が必要ですが、安全面を考えれば相談相手としては弁護士が最も安心感があります。
元々相続分野を扱う弁護士であれば、相続関連のトラブルは承知していますから、問題が生じない家族信託の設計を考えることができますし、万が一家族間でトラブルが起きた場合も対応が可能です。
弁護士は具体的に発生したトラブル事案において交渉を代理できる特権があるので、万が一の際も事件解決を丸ごと委任することができます。
法律に関することは弁護士であれば基本的に全ての作業・手続きを任せることができるので、お願いする側からすれば煩わしさがありません。
弁護士も事務所によって報酬規程は様々で目安の費用感を挙げるのは困難ですが、複雑でないケースの場合、家族信託契約書の作成費用として概ね30万円~50万円程度が目安として考えられます。
実際の費用感は弁護士事務所に直接確認するようにしてください。
税理士・会計士に頼んだ場合
士業のうち税理士と公認会計士については多少毛色が異なるので考えどころです。
まず税理士については、どの分野で活動しているのかをよく見極める必要があります。
相続税に強い税理士であれば比較的安心ですが、税理士試験において相続税は選択科目ですので、相続税分野をクリアしていない場合は相談相手として難が出ます。
相続税に明るい税理士であれば、家族信託設計の中で相続税の相談ができるので、税金に関して念入りに相談したいという希望があれば、メリットはあるでしょう。
ただし、税理士試験では民法の扱いが少ないので、遺言書の書き方や遺留分の計算などに弱い税理士もいるようです。
相続対策と合わせて総合的に家族信託の相談もしたい場合、相談相手としては心配な面も出てきます。
もちろん個々人で民法も含め相続問題の研究を念入りにしている税理士もいるでしょうから、加えて家族信託にも力を入れているのであれば問題ないかもしれません。
一方、公認会計士の試験は民法は多少扱うものの、相続税に関しては扱いません。
公認会計士は大企業の会計監査などを扱う業務に特化しているので、企業会計や会計監査を得意としています。
相続や家族信託など個人向けのサービスにはあまり縁がない職種ですので、相談相手としては不向きです。
なお税理士及び公認会計士の費用感を挙げることは困難ですので控えさせて頂きます。
民間資格(民間資格)の専門家に頼んだ場合
国家資格以外の民間資格については、最初に注意喚起が必要です。
法律で規制される国家資格は、質を確保して国民に不利益を与えないように配慮されています。
対して民間資格はそのような規制が無く、必ずしも質が保証されないことから下手に相談すると大きな不利益を被る恐れがあります。
具体的な資格名は挙げませんが、特にメジャーでない、あまり聞かない名前の民間資格を名乗る人物への相談は慎重に検討するようにしてください。
その人が日ごろどんな活動をしていて、知識のバックグラウンドはどこから来ているのかをよく調査してみましょう。
民間資格でも例えば日本FP協会が認定するCFPやAFPなどであれば、相続やお金に関する知識のバックボーンがあるので比較的安心かもしれません。
民間資格者の費用感も例示は困難ですので控えさせて頂きますが、「コンサルタント料」などの名目で高額になる可能性もあるので、どのような費用がどれだけかかるのか、しっかり確認するようにしてください。
銀行でも家族信託はできるのか?
家族信託は信頼できる身近な家族などを受託者とするもので、銀行で扱う信託とは全く別物です。
銀行も信託を取りあつかう所がありますが、こちらは商事信託といって必ず有償で行います。
家族信託は民事信託の分類で、信託銀行が扱う信託事業とは異なるので混同しないようにしましょう。
また一部の銀行では商品名として「家族信託」をうたうものもあるのでややこしいですが、こちらは一定のお金を預けておいて、預金者が亡くなった時に家族などに定期的にお金を送金するなどのサービス商品になります。
これも家族信託とは別物です。
結論として、銀行で家族信託を行うことはできません。
家族信託契約を自分でもできるのか?自分で行う場合のリスク
家族信託を進めるにあたっては、専門家の力を借りずに自分で進めることも絶対に不可能ということはありません。
家族信託の仕組みやメリット・デメリットをよく調べ、これまでのトラブル事例なども研究して間違いのない家族信託を設計でき、これを契約書に落とし込むことができるのであれば、自分で行うことは可能です。
ただ実際問題として、素人が安全で確実な信託の設計をすることについてはかなり難しいと言わざるを得ません。
家族信託の仕組み自体は理解できても、自分を取り巻く現状を理解し、問題点を整理、洗い出し、信託の仕組みを利用してどのように手当てするのか、その実務がまさに素人には難しいところなのです。
例えば、委託者、受託者、受益者を誰とするかまでは考えることができるでしょう。
どんな財産を預け、どのように運用するかということも想像する上では難しくありません。
しかしその財産を信託財産として預けた結果、どのようなトラブルが生じる可能性があるか、その場合の対処はどうすればよいのか、トラブルを予防するための補足手当をどう考えるかなど、派生する多くの諸問題に思いを巡らすことは専門家でも容易ではありません。
まして素人では正確な問題点の把握は困難ですので、非常に大きなリスクをはらむことになります。
もちろん家族信託に関する基本的な知識や情報を収集して自分でも勉強することは大切ですが、実際の信託内容の相談や設計は安全のためにも専門家と二人三脚で進めることを強くお勧めします。
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