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コラム

2021.03.29
少なくとも300万円!?成年後見制度に必要な費用感は?

認知症などで判断能力が衰えてしまった人の生活を支える制度は一つではなく、複数あります。

これらを上手く活用することで本人を様々なリスクから守ることができますが、制度の利用には費用面の問題も生じてきます。

また複数の支援策を検討するには自分のケースで不都合がでないかどうか、制度面の落とし穴的なデメリットがないかどうか確認しておかなければなりません。

本章では支援策の重要な柱である成年後見制度(法定後見)を軸に、他の支援制度を検討する際の注意点の確認や、費用面の比較などをしてみたいと思います。

成年後見制度の概要

成年後見制度(法定後見)は、認知症や事故など様々な事情で判断能力が低下してしまった人を支える支援策です。

健常な人であれば自分の生活は自分で維持していくことができますし、生活上のリスクを理解して、これを避けたり、対処したりすることができます。

例えば自家用車などを購入しようとするとき、性能と値段を比較して適切な車種を選択、購入することができますね。

しかし判断能力が低下してしまった人は適切な判断ができないため、収入に比して高すぎるものを購入してしまったり、その他不必要な出費をしてしまう可能性があります。

あるいは判断能力の低下に付け込まれ、悪質商法のターゲットにされたり、詐欺などの被害に合う危険もあります。

そのため、判断能力が衰えてしまった本人を支える支援者を設定して、本人に不利益が及ばないように支えてあげる必要があります。

具体的には、代理が必要な行為を代わって行ったり、ケースによっては本人がしてしまった不利な契約を取り消すなどの行為も可能です。

ただ、あまり過度に介入すると本人の自己決定権が失われることになるので、本人の判断能力を衰え度合いに応じて、介入する度合い(支援の度合い)を調整する仕組みになっています。

判断能力の衰えが強いケースでは支援の強さが上がり、判断能力の低下がそれほどでもない場合は必要最低限の支援に止めるというのが基本のスタンスです。

成年後見制度には支援の度合いが強い順に「後見」「保佐」「補助」の三つの類型が用意されていて、簡単にまとめると以下のようになります。

  後見 保佐 補助
支援を受ける人 成年被後見人 被保佐人 被補助人
支援する人 成年後見人 保佐人 補助人
支援を受ける人の状態 判断能力を欠いている状態 判断能力が著しく不十分な状態 判断能力が不十分な状態
支援の強度 強度 中等度 軽度

特に後見の部類に入る場合、本人は生活上必要な行為の多くを自分ですることができない状態となるので、強力な支援が必要とされます。

本章では以降、特に言及がないものは成年後見制度=後見として解説を進めます。

次の項では成年後見制度を専門家に頼んだ場合の費用面について見ていきます。

成年後見人を専門家に頼んだ場合の費用

ここでは成年後見制度の利用について、可能な手続きを専門家に頼んだ場合にどれくらいの費用がかかるのか見ていきます。

大きく申し立てにかかる費用と、後見業務開始後にかかる費用に分かれるので、それぞれ見ていきます。

実際の費用はケースによって変わりますので、ここでは一例として捉えてください。

①申し立てにかかる費用

家庭裁判所での申し立て手数料 800円
連絡に用いる切手代 5千円程度
本人の戸籍謄本 一通450円
本人の住民票 一通300円
本人が後見登記されていないことの証明書 一通300円
後見人候補者の住民票 一通300円
後見登記手数料 2600円
診断書 1万円程度
鑑定費用 10万円程度
本人が有する不動産の登記事項証明書 一通600円
専門家への手続き委託費 10万円~30万円程度

上記①は家庭裁判所に対する申し立て手続きの際のみにかかる費用ですので、継続性はなく一度きりの出費になります。

②後見事務開始後にかかる費用

成年後見人に対する報酬 月額2万円~6万円程度
後見監督人に対する報酬(選任された場合) 月額1万円~3万円程度
後見制度支援信託を利用した場合の専門家への報酬 10万円~30万円程度

上記②は後見事務開始後にかかる費用で、基本的には継続的にかかる費用です。

ただし後見制度支援信託を利用する場合の専門家への報酬については一度きりの出費になります。

この制度は金融機関と信託契約を締結する必要があり、そのための手続きが素人には大変なため、通常は弁護士などの第三者後見人を一時的に選任し、信託契約締結までの任にあたらせるのが通常です。

ただ信託契約締結後は当該第三者後見人は辞任し、親族後見人にバトンタッチすることになります。

以後は親族後見人が後見事務にあたるので、後見人としての報酬を請求しなければ費用はかかりません。

では上記①と②を合わせて仮の想定で費用を算定してみます。

幅が出る費用は下限の数字を用いることとし、②については弁護士等の第三者後見人が付き10年間の後見事務にあたったとします。

後見監督人の選任は無し、また専門職の後見人が付くことから後見制度支援信託の利用もないものとします。

すると、まず①の費用は22万350円、②の方は月額2万円×12か月×10年=240万円です。

あわせると262万350円ということになりますね。

やはり負担が大きくなるのは継続してかかる後見人への報酬です。

成年後見制度は一度利用すると基本的に本人が死亡するまで続けられますから、生存が長引くほどに負担は大きくなります。

ケースにもよりますが、成年後見制度を利用するには最低300万円弱はかかるという認識を持っておくと良いと思います。

成年後見以外の制度とその落とし穴

本人の判断能力が大きく低下する前であれば、他の支援制度を検討することもできます。

ただしデメリットが何もない完璧な支援策というものは残念ながら存在しないので、注意点をあらかじめ認識しておく必要があります。

ここでは他の支援策の代表的な落とし穴を押さえておきます。

1:任意後見制度の落とし穴

①取消権が無い

成年後見制度の場合、本人が自分に不利な契約をしてしまったときは成年後見人が取り消すことができます。

しかし任意後見の場合は本人の自己決定権の尊重が重要なベースになっているため、本人が不利益な契約を結んでしまった場合でも、任意後見人が取り消して本人を保護することはできません。

②適切な時期に裁判所に申し立てられない可能性

任意後見契約は元気なうちに準備しておき、認知症などで判断能力が低下した時期に家庭裁判所に手続きをして契約の効力を発動させる必要があります。

裁判所への申し立てができるのは任意後見の受任者か一定の親族だけです。

すでに本人の判断能力が衰えて手続きが必要な時期であるのにもかかわらず、本人の状態を正しく理解できずに手続きをしなかったり、下記③のように財産目的でわざと手続きを取らないといった事例も報告されています。

③財産の横領

任意後見契約の締結と同時に、同契約の効力を発動させる前から財産管理契約を別途結び、こちらの契約を先行して運用することもあります。

財産管理契約では受任者が本人の財産を手元で管理することになるので、悪意を持てば財産を横領することもできてしまいます。

必要な時期にあえて任意後見契約を発動させず、財産管理契約の下で少しずつ本人の財産を着服するといった事例も報告されています。

2:家族信託の落とし穴

①損益通算ができない

税務上の優遇措置の一つに「損益通算」があります。

例えば不動産所得で赤字がある場合、給与所得など他の所得と通算して計算上の黒字を減らし、税負担を減らすことができます。

家族信託を利用する場合、信託財産から生じた赤字は信託財産以外の財産から生じた所得と通算できません。

また信託契約が複数ある場合、ある信託契約の財産から生じた赤字を別の信託契約の財産から生じた所得と通算することもできません。

②税務手続きの手間の増加

信託財産から年間3万円以上の収入が発生した場合、信託計算書など一定の書類を税務署に提出する必要があります。

また信託財産から不動産所得が発生する場合、本来必要な書類に加えて信託財産に関する明細書も作成して提出しなければならないなど、税務上の手間が増えます。

③精通した専門家が少ない

家族信託は精通した専門家に相談しなければなりませんが、実務に耐えうる専門家は少数です。

法務、税務両方に詳しい専門家が必要なことから、複数専門家による連携が取れていないと安全な信託設計ができない可能性があります。

その他の生前対策との料金比較

成年後見制度だけでなく、他の支援制度もケースによって、また依頼する専門家の報酬体系によってかかる費用はかなり変わってくるので簡単な比較は難しいことをご了承頂いたうえで、概算としての料金を想定、比較してみます。

1:任意後見制度利用にかかる費用

①契約締結までにかかる費用
・専門家への契約書作成報酬・・10万円程度 
・財産目録作成のための資料(固定資産評価証明書や登記事項証明書など)の取得費用・・5千円~1万円程度
・公証人手数料等・・3万円程度

②任意後見契約の開始手続き及び開始後の費用
・裁判所での手続きにかかる費用・・5千円程度
・任意後見人の報酬・・家族に頼むとして0円
・任意後見監督人への報酬・・第三者が選任されたとして月額1万円程度(継続費用となる)

幅がある項目は成年後見制度と同様に下限の値を使用し、②は10年間運用されたとして継続費用を10年分で計算すると、①②を合わせて合計134万5千円程度~ということになります。

2:家族信託の利用にかかる費用

①専門家への報酬・・30万円~50万円程度
②公正証書化にかかる費用・・5万円程度
③不動産の信託登記にかかる登録免許税・・土地は固定資産税評価額の3/1000、建物は固定資産税評価額の4/1000。ここでは2千万円の土地を信託したとして6万円。
④上記③の手続きにかかる司法書士報酬・・5万円程度

家族信託の受任者は身近な家族で報酬無し、また順調に信託が運用されたとして途中の変更にかかる費用などもないものとします。

信託する土地の固定資産税は、信託するかどうかに関わらずかかる費用なのでここでは考慮しません。

継続してかかる費用はないとして、単純に上記①~④を合計すると46万円程度~という試算になります。

ここでの試算では費用面を見ると成年後見>任意後見>家族信託という結果になりましたが、実際の費用はケースバイケースでかなり変動します。

必要に迫られて検討するであろう成年後見制度は別として、余裕をもって能動的に検討することになる任意後見と家族信託については、専門家への相談の際にどれくらいの費用がかかるのか精査が必要です。

 

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